持分法利益とは?関連会社の利益が決算へ入る仕組み
持分法利益とは何かを初心者向けに解説。関連会社・子会社との違い、計算方法、PL・BS・キャッシュフローへの影響、減損や配当の注意点を整理します。
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企業の決算を読んでいると、「持分法による投資利益」「持分法による投資損失」「持分法投資損益」という項目が出てきます。これは、子会社ほど支配していないものの、経営へ重要な影響を与えられる関連会社などの利益・損失を、投資会社の連結決算へ反映する仕組みです。一般には「持分法利益」と呼ばれます。
持分法利益は、関連会社から現金配当を受け取った額ではありません。また、関連会社の売上高や負債を持分比率だけ連結する方法でもありません。関連会社の損益と純資産のうち投資会社へ帰属する変動を、原則として一行の損益と一行の投資残高へ反映するのが特徴です。
この記事では、持分法利益とは何か、対象会社の決め方、計算方法、日本基準とIFRSの違い、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書への影響、投資家が確認すべき注意点を解説します。三つの財務諸表のつながりに慣れていない場合は決算書の読み方を、一株利益やROEへの影響を確認する場合はROE・EPS・PER・PBRの見方も参考にしてください。
| 最初に区別するもの | 決算への取り込み方 | 売上高・資産・負債 |
|---|---|---|
| 連結子会社 | 原則として全額を連結し、非支配株主持分を分ける | 各科目を全額取り込む |
| 持分法適用会社 | 利益・純資産の持分相当額を投資損益・投資残高へ反映 | 原則一行で表示する |
| 単なる保有株式 | 金融商品として取得原価・時価などで測定 | 被投資会社の利益を持分計上しない |
持分法利益とは何か
企業会計基準委員会(ASBJ)の企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」は、持分法を、被投資会社の資本と損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じ、投資額を連結決算日ごとに修正する方法と定義しています。
基本形は次のとおりです。
持分法による投資利益
= 被投資会社の調整後利益 × 投資会社の持分割合
− のれん償却など
± 未実現損益・会計方針・取得時評価差額などの調整
被投資会社が利益を上げれば、投資会社は持分相当額を利益へ計上し、貸借対照表の投資残高も増やします。損失なら投資損失を計上し、投資残高を減らします。被投資会社から配当を受け取ったときは、同じ利益をもう一度収益にせず、原則として投資残高を減らします。
たとえば、30%を保有する関連会社の調整後利益が100億円なら、単純な出発点は30億円です。しかし、最終的な持分法利益は必ず30億円とは限りません。取得時ののれん、資産の時価評価、決算日のずれ、会計方針の差、グループ間取引の未実現利益などを調整するためです。
「持分法利益」は日常的な呼び方で、日本基準の正式な表示は「持分法による投資利益」または損益を一括した「持分法による投資損益」などです。会社によって科目名が少し異なるため、決算短信の注記と損益計算書で内容を確認します。
関連会社・子会社・共同支配企業の違い
持分法の対象を理解するには、株式の保有割合だけでなく「支配」と「重要な影響力」を区別します。
子会社は支配している会社
投資会社が被投資会社の意思決定機関を支配している場合は、原則として子会社です。子会社の売上高、費用、資産、負債を連結財務諸表へ全額取り込み、親会社以外の株主に帰属する部分を非支配株主持分と非支配株主に帰属する利益として分けます。
50%以下の保有でも、役員構成、契約、議決権を同じく行使する者との関係などから実質的に支配していれば子会社になることがあります。逆に、保有割合だけで機械的に判定しません。
関連会社は重要な影響力を持つ会社
日本基準では、関連会社は、出資、人事、資金、技術、取引などを通じて、子会社以外の会社の財務・営業・事業方針の決定へ重要な影響を与えられる場合の被投資会社です。
自己の計算で議決権20%以上を持つ場合は、原則として重要な影響力があると判定されます。15%以上20%未満でも、役員派遣、重要な融資、技術提供、重要な取引などがあれば関連会社になり得ます。緊密な関係者や議決権行使に同意する者の持分を合わせて判定する場合もあります。
したがって、「19%だから持分法ではない」「20%なら必ず持分法」という単純な線引きではありません。重要な影響力を実際に持てないことが明らかな場合や、他の関係を含めて影響力がある場合を考えます。
IFRSのIAS 28「関連会社及び共同支配企業に対する投資」も、関連会社を投資者が重要な影響力を持つ企業と定義し、議決権の20%以上を直接・間接に持つ場合は重要な影響力があるとの推定を置いています。
共同支配企業も持分法の対象になる
複数の企業が契約によって重要な意思決定を共同で支配し、事業体の純資産に対する権利を持つ共同支配企業があります。大規模開発、海外事業、資源・インフラ事業などで利用されます。日本基準でも持分法の対象となり、IFRSでもIFRS 11とIAS 28に基づき、一定の例外を除いて共同支配企業へ持分法を適用します。
連結子会社との決算表示の違い
持分法と連結の違いは、企業規模や利益率を比較するときに非常に重要です。30%保有する会社だから売上高の30%を連結する、という処理ではありません。
投資会社Aが、売上高1,000億円、営業利益100億円、純利益60億円の関連会社Bを30%保有しているとします。単純化すると、A社の決算へ入る持分法利益の出発点は18億円です。
| B社の項目 | B社実績 | A社の連結決算への反映 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,000億円 | 売上高へ300億円を足さない |
| 営業利益 | 100億円 | 営業利益へ30億円を足さない |
| 純利益 | 60億円 | 調整前の持分相当額18億円 |
| 資産 | 800億円 | 資産各科目へ240億円を足さない |
| 負債 | 500億円 | 負債各科目へ150億円を足さない |
一方、B社を子会社として連結する場合は、売上高1,000億円、営業利益100億円、資産800億円、負債500億円を原則として全額取り込み、外部株主の持分を別表示します。
この違いにより、持分法適用会社を多く持つ企業は、実質的な事業規模に比べて連結売上高や連結資産が小さく見えることがあります。連結営業利益率だけを見ると高収益に見えても、持分法利益が最終利益の大きな部分を占める場合があります。
逆に、持分法適用会社の借入金は通常、投資会社の連結貸借対照表へ負債として一行ずつ入りません。だからといって経済的リスクがないわけではありません。投資会社が債務保証、追加融資、原料引取義務などを負っていれば、関連会社の財務悪化が投資会社の現金へ波及します。
企業比較では、次の二つを混ぜないことが大切です。
- 会計上の連結売上高・営業利益・有利子負債
- 持分法適用会社まで含めた経済的な事業規模・利益・リスク
商社、資源、金融、通信、インフラなど共同投資が多い業種では、持分法利益と重要な関連会社の情報を別に確認します。
持分法利益の計算を数字で理解する
単純な「純利益×30%」から、実際の調整へ進む例を考えます。A社はB社の30%を420億円で取得しました。取得時のB社の調整後純資産は1,000億円で、A社持分は300億円です。差額120億円をのれんとし、日本基準で10年間の定額償却と仮定します。
当期のB社純利益は200億円です。また、B社がA社へ売却した資産に40億円の利益が含まれ、その資産は期末時点でA社グループ外へ売却されていないとします。税効果や取得時の資産評価差額は無視します。
| 計算項目 | 金額 | 考え方 |
|---|---|---|
| B社純利益の30% | 60億円 | 200億円×30% |
| のれん償却 | ▲12億円 | 120億円÷10年 |
| 未実現利益の消去 | ▲12億円 | 40億円×30% |
| 持分法による投資利益 | 36億円 | 60−12−12 |
この36億円をA社の連結損益へ計上し、投資簿価も420億円から456億円へ増やします。その後、B社が合計50億円を配当し、A社が15億円を受け取れば、投資簿価は441億円へ下がります。
期末投資簿価
= 期首投資簿価420億円
+ 持分法利益36億円
− 受取配当15億円
= 441億円
配当15億円は現金収入ですが、連結上は新たな利益15億円を二重計上しません。B社の利益発生時に持分法利益を認識済みだからです。これが、持分法利益と受取配当を分ける最大の理由です。
実際には、B社のその他の包括利益に含まれる為替換算差額や有価証券評価差額の持分、取得時に時価評価した資産の減価償却、税効果、持分比率の変化なども投資残高へ影響します。そのため、決算短信の持分法利益だけでは投資簿価の増減を完全に説明できない場合があります。
のれん・未実現損益・決算期差の調整
持分法の計算を正しく読むには、持分比率以外の主な調整を知っておく必要があります。
取得時ののれん
投資額が取得時の被投資会社純資産の持分相当額を上回る部分には、ブランド、技術、顧客基盤、成長期待などが含まれます。日本基準では持分法投資に含まれるのれんを原則として一定期間で償却し、その償却額が持分法利益を減らします。
IFRSでは、関連会社取得時ののれんは投資の帳簿価額に含まれますが、独立したのれんとして定期償却しません。投資全体について減損の兆候を検討します。この差により、同じ事業へ同じ価格で投資しても、日本基準企業とIFRS企業の投資損益が異なることがあります。
取得時の資産・負債評価
取得時に、被投資会社の土地、設備、無形資産などの帳簿価額と公正価値に差があれば、持分法計算の基礎を調整します。設備の評価差額はその後の減価償却へ、在庫の評価差額は販売時の原価へ影響します。表面上の被投資会社純利益へ持分比率を掛けただけでは再現できません。
グループ間の未実現損益
投資会社グループと持分法適用会社の間で資産を売買し、期末時点で外部へ売却されていない場合、内部で生じた利益のうち持分相当部分を消去します。外部へ売却されて初めて実現利益になります。
一方、取引が損失なら何でも消去するわけではありません。資産価値の下落を示す損失まで消すと過大評価になるため、取引の実質と減損を確認します。
会計方針と決算日の違い
日本基準では、同じ環境下の同じ性質の取引について、投資会社と持分法適用会社の会計方針を原則として統一します。決算日が異なる場合は被投資会社の直近財務諸表を使い、その間に重要な取引・事象があれば修正または注記します。
海外関連会社では、現地会計基準から投資会社の連結会計方針へ調整する項目が生じます。決算期が3か月ずれていると、資源価格急落、為替変動、大型売却などが投資会社の決算へ一四半期遅れて見えることもあります。会社の注記で使用した決算日と重要な後発事象を確認します。
損益計算書・貸借対照表・CFへの影響
持分法利益は、三つの財務諸表へ同じタイミングで同じ金額の現金として現れるわけではありません。
損益計算書
日本基準では、持分法による投資損益を営業外収益または営業外費用に一括表示します。したがって、営業利益には含まれず、経常利益・税金等調整前利益・親会社株主に帰属する純利益へ影響します。
持分法利益は、被投資会社が法人税などを反映した後の利益を基礎にするため、投資会社の営業利益とは性格が違います。営業利益100億円と持分法利益100億円を単純に合計して「営業利益200億円」と呼ぶことはできません。
IFRSでは「持分法で会計処理されている投資の純損益に対する持分」などとして表示されます。会社が使う利益指標や表示区分が日本基準と異なるため、営業利益の比較では計算定義を確認します。
貸借対照表
取得時の投資原価を出発点に、持分法利益、持分法損失、その他の包括利益、配当、持分比率変動、減損などを反映した投資残高が計上されます。被投資会社の現預金、棚卸資産、借入金を持分比率分だけ個別表示するわけではありません。
この一行表示には情報の圧縮があります。投資残高500億円の背後に、被投資会社の大きな設備と借入金が存在する場合があります。有価証券報告書の関係会社情報、重要な関連会社の要約財務情報、債務保証、貸付金を確認します。
キャッシュフロー計算書
持分法利益が30億円増えても、その時点で30億円の現金を受け取ったとは限りません。間接法の営業キャッシュフローでは、税引前利益に含まれた非資金の持分法損益を調整します。実際に受け取った配当は現金収入として別に現れます。
関連会社株式の取得・売却、追加出資は通常、投資キャッシュフローに影響します。関連会社が設備投資のため利益を内部留保すれば、投資会社は持分法利益を計上しても配当を受け取れません。利益と現金回収の差が長期化していないかを見ます。
| 事象 | PL | BSの投資残高 | 現金 |
|---|---|---|---|
| 関連会社が利益を計上 | 持分法利益が増える | 原則増える | 直ちには増えない |
| 関連会社が損失を計上 | 持分法損失が増える | 原則減る | 直ちには減らないこともある |
| 配当を受け取る | 原則二重に利益計上しない | 減る | 増える |
| 追加出資する | 原則直ちに利益にならない | 増える | 減る |
| 減損を計上する | 損失が出る | 減る | 当期に現金流出しない |
赤字・債務超過・減損の扱い
関連会社が赤字になると、投資会社は持分相当の持分法損失を計上し、投資残高を減らします。赤字が続けば投資残高がゼロへ近づきます。
日本基準の実務指針では、関連会社の欠損を負担する責任が投資額の範囲に限られる場合、原則として持分法による投資価額がゼロになるところまで損失を負担します。帳簿価額がゼロだから、その後の経済的損失が必ずゼロになるという意味ではありません。
次のような関係があれば、投資額を超えて損失負担が生じる可能性があります。
- 他の株主との損失分担契約
- 関連会社への長期貸付金
- 借入金への債務保証や担保提供
- 赤字会社を支援し続ける事実上の義務
- 原料引取、工事完成、顧客保証などの契約
他の株主に資金力がなく、投資会社だけが実質的に債務を負担する状況では、持分比率を超えるリスクもあります。関連会社の「持分法損失30億円」だけでなく、貸付金、保証残高、追加支援方針を読みます。
また、関連会社の収益性低下、時価総額の下落、重要事業の失敗などは減損の兆候になります。持分法損失は毎期の業績悪化を持分相当で反映するのに対し、減損は投資自体の回収可能性が低下した場合の追加的な評価切下げです。両方が同じ期に生じることもあります。
減損は非資金損失ですが、「現金が出ていないから無視してよい」とは限りません。過去の投資判断が期待した回収を生まない可能性を示し、将来の配当や売却価値も低下しているからです。一方、既に投資家が悪化を十分織り込んでいれば、減損発表時の株価反応が小さい場合もあります。
持分法利益が増減する主な理由
持分法利益の前年差を見たら、関連会社の本業だけでなく、対象範囲と会計調整を分けます。
関連会社の本業が成長・悪化した
数量、単価、原材料、為替、固定費などによって関連会社の純利益が変わり、持分相当額も変化します。最も基本的な要因です。重要な関連会社の決算資料が公開されていれば、投資会社の説明だけでなく原資料も確認します。
一時利益・一時損失が出た
資産売却益、減損、訴訟、税金、補助金、為替差損益なども持分法利益へ入り得ます。持分法利益が倍増しても、本業の利益が倍増したとは限りません。関連会社の営業利益と純利益の差を確認します。
持分比率が変わった
追加取得、一部売却、関連会社の第三者割当増資、自己株買いなどで実質持分比率が変わります。関連会社の利益が同じでも、30%から25%へ下がれば持分法利益は減ります。増資に参加しなければ希薄化し、持分変動損益が生じる場合もあります。
持分法の対象へ入った・外れた
新規取得で重要な影響力を得れば、取得日以後の損益へ持分法を適用します。追加取得で支配を獲得すれば、持分法から連結子会社へ変わります。一部売却で重要な影響力を失えば、持分法の適用を終了します。
この変更期は前年比がつながりません。対象会社の業績変化と、連結範囲・計上期間の変化を分けます。持分法利益が減って営業利益が増えた場合、単なる子会社化による表示場所の移動かもしれません。
のれん・取得時評価・未実現利益が動いた
大型投資の直後はのれん償却や取得時評価差額の影響が増えます。グループ内取引が大きい会社では、在庫や資産の外部売却時期で未実現利益の消去・実現が変わります。会社開示に調整内訳がなければ、表面上の純利益×持分比率と連結計上額の差を記録します。
日本基準とIFRSで異なる点
日本基準とIFRSは、重要な影響力を持つ関連会社へ持分法を使い、利益持分を投資損益と投資残高へ反映し、受取配当で投資残高を減らすという骨格が共通しています。ただし、細部は同じではありません。
| 主な論点 | 日本基準 | IFRS |
|---|---|---|
| 関連会社 | 重要な影響力で判定 | 重要な影響力で判定 |
| 20% | 原則的な判定基準だが実質も見る | 重要な影響力があるとの推定 |
| 共同支配企業 | 持分法の対象 | 原則として持分法 |
| 投資に含まれるのれん | 原則として一定期間で償却 | 定期償却せず投資全体で減損検討 |
| 投資損益の表示 | 営業外収益・費用に一括表示 | IAS 28等に従い一行表示。利益指標の定義確認が必要 |
| 個別財務諸表 | 原則として株式を取得原価等で計上 | IAS 27の選択肢など制度差がある |
比較で影響が大きいのは、のれん償却と利益表示です。日本基準企業は関連会社取得時ののれん償却で持分法利益が継続的に減り、IFRS企業は定期償却がない代わりに減損時の損失が大きくなる可能性があります。
また、IFRS企業が独自に「事業利益」「コア営業利益」などを開示し、その中に持分法利益を含めることがあります。名称だけで日本基準の営業利益と比べず、計算式と調整表を確認します。
IFRS FoundationのIFRS 12「他の企業への関与の開示」は、子会社、共同支配の取決め、関連会社などへの関与に関する開示を定めています。IFRS企業を分析するときは、重要な関連会社の要約財務情報、持分の性質、制約、リスクも注記で確認します。
投資家が確認する10の手順
持分法利益が重要な会社は、次の順序で確認すると見落としが減ります。
- 会計基準を確認する:日本基準、IFRS、米国基準のどれかを最初に確認する
- 利益の表示場所を探す:営業利益、営業外損益、独自利益指標のどこへ含まれるかを見る
- 対象会社を一覧にする:会社名、事業、国、持分比率、決算日を有価証券報告書から抜き出す
- 重要会社を絞る:投資残高、利益寄与、保証・貸付が大きい会社を優先する
- 前年差を分解する:本業、一時損益、為替、持分比率、対象範囲の変化に分ける
- 表面計算との差を見る:関連会社純利益×持分比率と実際の持分法利益との差を確認する
- 利益と配当を分ける:利益寄与に対して現金配当がどれだけ回収できたかを見る
- 簿外に見えるリスクを探す:債務保証、貸付、追加出資、長期契約を確認する
- 減損の兆候を確認する:赤字継続、事業計画未達、時価下落、規制変更を調べる
- 一株価値へつなぐ:持分法利益の正常値、投資残高の回収可能性、株式数を使ってEPSと評価を試算する
有価証券報告書は金融庁のEDINETで確認できます。「関係会社の状況」「持分法の適用に関する事項」「関連当事者情報」「セグメント情報」「偶発債務」「投資有価証券」などを検索します。
決算短信は速報性が高く、東証の決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領に基づく様式で主要数値を確認できます。ただし、持分法適用会社の内訳は説明資料や有価証券報告書の方が詳しい場合があります。
分析メモでは、次の表を作ると便利です。
| 関連会社 | 持分比率 | 当期利益 | 単純持分額 | 実際の連結計上額 | 配当受取 | 保証・貸付 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| B社 | 30% | 200億円 | 60億円 | 36億円 | 15億円 | なし |
| C社 | 25% | ▲80億円 | ▲20億円 | ▲25億円 | 0円 | 100億円 |
単純持分額と実際の連結計上額の差が大きい場合、のれん、取得時評価、未実現損益、会計方針、計上期間を調べます。C社のように損失額より保証・貸付が大きければ、将来の現金流出リスクを重点的に見ます。
よくある読み違いと評価のポイント
持分法利益が増えれば現金も増える
持分法利益は発生主義で認識するため、配当を受け取るまで投資会社へ現金が移らないことがあります。関連会社が成長投資に資金を使えば、利益寄与は大きくても配当は少ないままです。営業キャッシュフローと受取配当を確認します。
20%未満なら関係ない
重要な影響力は出資比率だけで決まりません。役員派遣、融資、技術、販売・仕入取引、緊密な関係者の議決権などを含めます。逆に、20%以上でも影響力を持てないことが明らかな特殊事情があれば結論が変わる可能性があります。
持分法会社の借金は投資会社と無関係
借入金が投資会社の連結負債へ全額表示されなくても、保証、貸付、契約、評判、事業継続上の必要から支援を迫られることがあります。「非連結だから安全」ではなく、最大損失額を考えます。
持分法利益は質の低い利益だから全て除外する
関連会社が強い事業と安定した現金創出力を持ち、継続的に配当を払っているなら、持分法利益は株主価値へつながります。反対に、一時売却益や評価益に偏り、追加出資ばかり必要なら質を慎重に見ます。一律にゼロ評価せず、事業内容と現金回収を確認します。
持分法利益が減ったから本業が悪化した
関連会社の子会社化で持分法利益が消え、売上高・営業利益へ表示が移っただけかもしれません。一部売却、増資による希薄化、決算期変更、のれん償却もあり得ます。対象範囲と持分比率の前年差を先に確認します。
評価では、持分法利益を含む純利益へPERを掛ける方法と、重要な持分法投資を別に評価するSOTP(事業価値の積み上げ)があります。関連会社が上場していれば保有株式の時価を参考にできますが、税金、売却制約、支配権の欠如、持株会社ディスカウントを考慮します。非上場会社なら、正常化利益、純資産、類似会社倍率、配当可能性を使い、過度な精密さを避けます。
まとめ
持分法利益とは、重要な影響力を持つ関連会社や共同支配企業などの利益・損失のうち、投資会社へ帰属する部分を連結損益へ反映するものです。同時に、貸借対照表の投資残高も増減します。
ただし、計算は「関連会社の純利益×持分比率」だけでは終わりません。取得時ののれん・資産評価、会計方針、決算期差、未実現損益、配当、その他の包括利益、持分比率の変化、減損などを調整します。
持分法適用会社の売上高、資産、負債は、子会社のように一行ずつ全額連結されません。そのため、連結売上高だけでは事業規模を過小評価し、連結有利子負債だけでは関連会社リスクを見落とす可能性があります。
投資家が最も注意したいのは、利益と現金を分けることです。持分法利益を計上しても配当がなければ現金は入りません。重要な関連会社の本業、受取配当、投資残高、保証・貸付、追加出資、減損の兆候をセットで確認します。
よくある質問
Q. 持分法利益とは何ですか?
関連会社や共同支配企業などの利益・損失のうち、投資会社の持分に見合う額を連結決算へ反映する項目です。利益なら投資残高を増やし、損失なら減らすのが基本です。
Q. 持分法利益と受取配当金は同じですか?
同じではありません。持分法利益は関連会社で利益が発生した時点で認識し、現金受領を必要としません。後日受け取る配当は、原則として投資残高を減らし、同じ利益を二重計上しないようにします。
Q. 株式を20%持てば必ず持分法になりますか?
20%は重要な基準ですが、機械的に決まるわけではありません。日本基準では役員派遣、融資、技術提供、重要取引、緊密な関係者の議決権などを含め、財務・事業方針へ重要な影響を与えられるかで判定します。
Q. 持分法利益は営業利益に含まれますか?
日本基準では、持分法による投資損益を営業外収益または営業外費用へ一括表示するため、営業利益には含まれません。IFRS企業や会社独自の利益指標では表示・算入方法が異なることがあるため、定義を確認してください。
Q. 持分法適用会社が赤字になったら損失は投資額までですか?
投資額の範囲に責任が限られるなら、原則として投資価額がゼロになるまでです。ただし、貸付金、債務保証、損失分担契約、事実上の支援義務があれば、投資額を超える損失や現金流出が生じる可能性があります。
参考リンク
- 企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」|企業会計基準委員会
- 移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」|企業会計基準委員会
- 企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」|企業会計基準委員会
- IAS 28 Investments in Associates and Joint Ventures|IFRS Foundation
- IFRS 12 Disclosure of Interests in Other Entities|IFRS Foundation
- EDINET|金融庁
- 決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領|日本取引所グループ
※本記事は会計制度と企業分析の一般的な解説であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。個別企業の会計処理は、採用基準、契約、重要性などで異なるため、最新の有価証券報告書と会社開示を確認してください。
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