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優先株式とは?普通株・社債との違いと配当・償還リスク

優先株式の仕組みを、配当・議決権・残余財産・取得条項から解説。普通株式や社債との違い、社債型種類株式、利回りの計算、金利・信用・流動性・償還リスクも整理します。

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情報開示・株式売買第3回/全3回
目次12項目
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優先株式とは、配当や会社清算時の残余財産などについて、普通株式より優先する条件を持たせた種類株式です。その代わり、株主総会の議決権が制限される、普通株の増配へ十分に参加できない、発行会社の判断で取得されることがあるなど、銘柄ごとに異なる条件が付いています。

 名前に「優先」とあっても、元本や配当が保証される商品ではありません。社債より弁済順位が低く、分配可能額がなければ配当が支払われない可能性があります。近年は、固定的な配当と発行会社による将来の取得を組み合わせた「社債型種類株式」の上場が増えていますが、法的には株式です。

最初に押さえる点内容
優先するもの配当、残余財産など。具体的な順位と金額は定款・発行要項で決まる
制限されやすいもの普通株主総会の議決権、普通株の増配への追加参加
元本保証されない。市場価格は金利・信用力・需給で変動する
取得・償還発行会社が一定日以後に取得できる商品があるが、予定日に必ず取得されるとは限らない
最重要資料定款、発行要項、有価証券届出書、目論見書、適時開示

 普通株式の配当や株価指標の基本はROE・EPS・PER・PBRの見方でも解説しています。本記事では、普通株式と同じ会社が発行していても損益と価格の動きが異なる、優先株式固有の読み方へ焦点を当てます。

優先株式とは?会社法が認める種類株式の一つ

 株式会社が通常発行する株式は普通株式です。普通株主は、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会での議決権など、標準的な株主の権利を持ちます。一方、会社法第108条は、一定の事項について異なる条件を定めた二つ以上の種類の株式を発行できるとしています。

 会社法が種類ごとに異なる定めを認める主な事項は次の九つです。

  1. 剰余金の配当
  2. 残余財産の分配
  3. 株主総会で議決権を行使できる事項
  4. 譲渡に会社の承認を必要とすること
  5. 株主が会社へ取得を請求できること
  6. 一定の事由で会社が取得できること
  7. 株主総会決議で会社が全部を取得できること
  8. 特定事項に種類株主総会の決議も必要とすること
  9. 種類株主総会で取締役・監査役を選任すること

 「優先株式」は会社法上、商品条件が一つに決まった名称ではありません。一般には配当または残余財産で普通株より有利な種類株式を指しますが、配当率、累積性、議決権、取得条件、普通株への転換、存続期間は発行ごとに違います。同じ発行会社の第1回と第2回でも条件が異なることがあります。

優先順位は債権者より上ではない

 利益配当では、定款の条件に従い、優先株主へ普通株主より先に配当します。しかし、借入金や社債の利息・元本は契約上の債務であり、配当とは性質が違います。会社の財産に対する大まかな順位は次のように考えます。

一般債権者・社債権者など → 優先株主 → 普通株主

 実際の破綻時は担保、債権の種類、劣後特約、清算費用などで順位が細かく分かれます。それでも、優先株主は「債権者より優先する株主」ではなく「普通株主より一定の条件で優先する株主」です。

議決権がなくても株主の権利がすべて消えるわけではない

 上場優先株式や社債型種類株式では、普通株主総会の議決権を原則持たない設計が多く見られます。ただし、その種類の株主へ損害を及ぼすおそれがある定款変更などでは、会社法や定款に基づき種類株主総会が開かれ、種類株主が議決権を持つ場合があります。議決権の有無は「なし」の一語だけでなく、例外条件まで読みます。

配当条件を決める「累積・参加・固定・変動」

 優先株式の収益を理解するには、配当条件を四つの軸へ分けます。名称が似ていても、組み合わせによって普通株寄りにも社債寄りにもなります。

累積型と非累積型

 所定の優先配当が支払われなかった場合、その不足額を翌期以降へ持ち越すのが累積型です。持ち越さないのが非累積型です。

 累積型でも、未払配当が社債利息と同じ確定債務になるとは限りません。将来、配当可能な条件を満たしたうえで優先される仕組みです。非累積型は、その期に配当されなかった不足分を後から請求できないため、配当停止の損失がそのまま残りやすくなります。

参加型と非参加型

 所定の優先配当を受け取った後、普通株主とともに残りの配当へ参加できるのが参加型です。所定額を超える配当を受け取らないのが非参加型です。

 非参加型は、発行会社の利益が大きく増えて普通株が増配しても、優先株の配当が契約上の上限にとどまります。利益成長の上振れを受けにくい代わりに、所定の配当を普通株より先に受ける設計です。東証の社債型種類株式は、一般に非参加型優先株の一種として上場します。

固定配当と変動配当

 発行価格に対して一定率を払う固定型だけでなく、一定年数後に基準金利へ上乗せ幅を加えた率へ変わる商品、普通株配当の一定倍率を支払う商品もあります。

 固定型は市場金利が上がると相対的な魅力が低下し、価格が下がりやすくなります。基準金利連動型も、金利見直しの頻度、参照金利、上限・下限、上乗せ幅を確認しなければ、金利上昇へ完全に追随するとは限りません。

配当は分配可能額と会社の決定に制約される

 優先配当率が発行要項に記載されていても、社債利息のような無条件の支払義務とは限りません。会社法上の分配可能額がなく、所定の機関決定が行われなければ、全部または一部が支払われないことがあります。

 「過去に一度も配当を止めていない」「経営陣が配当継続を予定している」は参考情報ですが、保証ではありません。利益剰余金、分配可能額、営業キャッシュフロー、借入契約、普通株配当の制限条項まで確認します。

取得・転換・残余財産の条件を読む

 優先株式では、配当率だけを見て購入すると、発行会社による取得や普通株への転換で想定外の結果になることがあります。「誰が、いつ、何を対価に、どの価格で動かせるか」を整理します。

取得請求権付株式

 株主側が会社へ取得を請求できる種類株式です。対価は現金、普通株式、社債など、定款で定められたものになります。株主が普通株式への転換を選べる設計なら、普通株価上昇への参加余地がある一方、転換による普通株式数の増加を考える必要があります。

取得条項付株式

 一定の事由が生じたとき、会社側が種類株式を取得できる設計です。社債型種類株式では、発行から所定期間が過ぎた後に、発行会社が発行価格相当の現金を対価として取得できる条件が一般的です。

 ここで重要なのは、最初の取得可能日が「満期」ではないことです。会社に取得する権利があっても義務がなければ、市場金利上昇や財務悪化で借り換えが不利なとき、取得を見送る可能性があります。投資家が希望する日に額面で換金できる権利ではありません。

取得された場合の再投資リスク

 市場金利が低下し、発行会社がより低いコストで資金を調達できる環境では、会社が優先株式を取得する動機が強くなる場合があります。投資家は高い配当を受け続けられず、返ってきた資金を低い利回りで再投資することになります。

 反対に市場金利が上昇したときは、投資家が額面での取得を期待していても、会社が取得を見送る可能性があります。価格下落時は長く保有し、価格上昇余地は取得価格で抑えられるという、発行会社側に有利な非対称性が生じます。

残余財産分配

 会社を清算した場合の残余財産について、普通株より先に発行価格相当額などを分配する条件があります。ただし、債権者へ支払った後に財産が残っていることが前提です。優先額を超える残りへ参加できるか、上限があるかも銘柄ごとに違います。

社債型種類株式と現在の上場銘柄

 社債型種類株式は、東証で優先株等として上場する株式のうち、社債に似た商品性を持つ種類株式の通称です。一般に、所定の優先配当、普通株主総会での議決権制限、発行会社による将来の取得条項、普通株配当の上振れへ参加しない非参加型という特徴があります。

 2026年7月13日時点で、東証の優先株等の銘柄一覧には次の7銘柄が掲載されています。価格や配当率ではなく、商品が多様化していることを確認するための一覧です。

コード銘柄上場日主な型
92015日本航空 第1回社債型種類株式2026年6月4日社債型種類株式
92025ANAホールディングス 第1回社債型種類株式2025年12月15日社債型種類株式
75505ゼンショーホールディングス 第1回社債型種類株式2025年10月2日社債型種類株式
94346ソフトバンク 第2回社債型種類株式2024年10月4日社債型種類株式
50765インフロニア・ホールディングス 第1回社債型種類株式2024年8月2日社債型種類株式
94345ソフトバンク 第1回社債型種類株式2023年11月2日社債型種類株式
25935伊藤園 第1種優先株式2007年9月3日普通株配当連動型の優先株式

 上場銘柄数は今後変わります。購入時は東証の最新一覧と各社の目論見書を確認してください。

伊藤園の第1種優先株式は社債型と条件が違う

 伊藤園の第1種優先株式は、普通株式の配当額の125%を優先配当とし、普通株が無配でも1株15円を下限としています。未払分は累積し、株主の意向による普通株への転換権はなく、普通株主総会の議決権は原則ありません。一定の組織再編、公開買付け、上場廃止などでは、会社が普通株式を対価として1対1で取得する場合があります。

 このように、普通株配当へ連動する優先株と、所定配当を中心とする社債型種類株式では価格の動きが異なります。「優先株式」という分類だけで同じ利回り商品として比べません。

普通株式・社債・劣後債との違い

 優先株式は株式と社債の中間に見えますが、都合よく両方の長所だけを得る商品ではありません。権利、収益、リスクを分けて比較します。

比較項目普通株式優先株式・社債型種類株式普通社債
法的性質株式株式債務
配当・利息業績・方針で変動所定の優先条件。ただし配当停止あり契約上の利息
元本返済満期なし満期がない場合が多く、会社取得は条件付き原則として満期に償還
議決権原則あり制限・なしが多いなし
会社清算時の順位株主の中で後順位普通株より優先、債権者より後株主より優先
利益成長への参加大きい非参加型では限定的なし
市場価格の主因利益成長、還元、評価倍率金利、信用力、配当条件、取得期待金利、信用力、残存期間

劣後債とも違う

 劣後債は一般債権より弁済順位が低い社債ですが、法的には負債です。利息・償還条件は契約で定められます。優先株式は劣後債よりさらに損失吸収力を持つ設計になり得ますが、個別条件によって会計・格付・規制資本上の扱いが違います。

預金の代わりではない

 優先株式は銀行預金ではなく、預金保険の対象でもありません。市場で売却すると価格変動損が発生し、売買が少ない銘柄では希望価格で売れない可能性があります。発行会社が大企業でも、元本確保を目的とする生活防衛資金の置き場とは性質が異なります。

配当利回りと取得時の損益を計算する

 優先株式の表示配当率だけでなく、自分の購入価格に対する利回りを計算します。年間配当金が300円、市場価格が9,600円なら、単純な予想配当利回りは約3.13%です。

300円÷9,600円×100=約3.13%

 発行価格1万円に対する配当率3.0%と、市場価格9,600円で買った投資家の利回り3.13%は違います。税引後の手取りは口座、保有者区分、申告方法などで変わるため、税引前と税引後を分けます。

発行会社による取得まで含めた例

 市場価格9,600円で購入し、2年後に会社が1万円で取得、その間に年間300円の配当を2回受け取る単純例では、税・手数料を無視した総受取額は1万600円です。

配当300円×2年+取得対価1万円=1万600円

1万600円-購入価格9,600円=利益1,000円

 単純な2年間の累計リターンは約10.42%ですが、年率は資金を受け取る時期を考慮して計算します。実務ではXIRRなどを使い、購入日、各配当日、取得日を入力します。

 反対に1万500円で購入し、1万円で取得されるなら、配当を受け取っても500円の取得差損があります。取得価格を上回って買う場合は、最初の取得可能日までの配当で価格差を回収できるかを確認します。

最初の取得可能日を満期として計算しない

 会社が取得できる日は、取得を約束する日ではない場合があります。「5年後に1万円へ戻る」と決めつけた利回り計算は危険です。取得する場合、取得しない場合、配当率が見直される場合の少なくとも三つを置きます。

ケース確認するもの
会社が最初の取得可能日に取得取得価格、配当回数、再投資利回り
会社が取得を見送るその後の配当率、価格下落、保有期間
信用力が悪化する配当停止、格付低下、売却価格、残余財産

普通株との価格差は裁定で必ず消えるわけではない

 同じ会社の普通株式と優先株式でも、議決権、配当、取得・転換、流動性が違います。普通株価との比率が過去平均より低いというだけで割安とは限りません。普通株の成長期待、優先株の固定的収益、売買高、制度変更を分けます。

優先株式の七つの主要リスク

 高い配当は、無料の上乗せではありません。普通株式や社債と違うリスクを負う対価です。

1. 配当停止リスク

 優先配当は普通株配当に先立ちますが、債務ではありません。分配可能額の不足、業績悪化、資本規制、取締役会等の判断で支払われない可能性があります。非累積型なら不足分は翌期へ持ち越されません。

2. 信用リスク

 発行会社の財務が悪化すると、配当停止と価格下落が同時に起こり得ます。自己資本があるから安全と考えず、営業CF、有利子負債、利払い余力、格付、満期別の資金需要を確認します。減配リスクの見抜き方で扱う利益・キャッシュ・財務の三段階は、優先配当の持続性を見るときにも使えます。

3. 金利上昇リスク

 固定配当の商品は、市場金利が上がると新しい債券・優先証券の利回りが上がり、既存商品の相対的な魅力が低下します。その結果、市場価格が下がります。取得日が遠い、または会社が取得する義務のない商品ほど、金利変化の影響が長引く可能性があります。

4. 取得・延長リスク

 金利低下時は会社が取得し、投資家が高利回りを失う可能性があります。金利上昇時や信用悪化時は取得が見送られ、低い配当率の商品を保有し続ける可能性があります。発行会社の取得権を、投資家の償還請求権と取り違えません。

5. 流動性リスク

 優先株式は普通株式より発行額・投資家数・売買高が小さくなりやすく、売値と買値の差が広がることがあります。東証も、社債型種類株式は普通株のような頻繁な売買が想定されず、希望する価格・時期に売買できないおそれを示しています。

 日々の出来高だけでなく、板の厚さ、売買代金、保有予定額を確認します。自分の注文が通常の売買高に対して大きい場合、表示価格で全量を売れない可能性があります。

6. 普通株の上昇へ参加しにくいリスク

 非参加型の配当は上限が決まっています。会社の利益が倍増して普通株価が上昇しても、優先株価は金利と信用力を中心に動き、上昇が限定される場合があります。成長株の代替ではなく、異なる収益構造の商品です。

7. 条件・税務が複雑なリスク

 目論見書には、配当率の段階変更、取得事由、税制変更時の追加取得、組織再編時の扱いなどが記載されます。発行会社による取得では、資本金等の額、取得価格、購入価格に応じて、個人投資家にみなし配当または譲渡損益が生じる場合があると東証は注意喚起しています。

 上場株式等の配当に関する一般的な申告方法だけで判断せず、取得時の開示と証券会社の案内を確認します。金額が大きい場合や条件が複雑な場合は、税務署または税理士へ確認してください。

発行会社と普通株主から見た意味

 会社が優先株式を発行する理由は、借入・普通社債・普通株増資以外の資金調達手段を増やすことです。返済期限のない資本性資金を調達しながら、普通株の議決権希薄化を抑えられる設計があります。一方、優先配当と将来の取得にはコストがかかります。

発行会社にとっての利点

  • 普通株主の議決権割合を直ちに薄めずに資金を調達しやすい
  • 会計・格付・規制上、条件に応じて資本性を得られる可能性がある
  • 普通社債より長期・永久性のある資金を確保できる
  • 投資家層と資金調達手段を分散できる
  • 普通株を安値で大量発行することを避けられる場合がある

発行会社と普通株主の負担

 優先配当は普通株主への配当より先に配分されます。利益が同じなら、優先株主へ帰属する金額が増えるほど、普通株主に帰属する利益は小さくなります。日本基準の1株当たり当期純利益は、普通株主の成果を示すため、留保利益から行われる優先配当額を当期純利益から控除して計算します。

 単純化して、親会社株主に帰属する利益が1,000億円、優先配当総額が100億円、期中平均普通株式数が9億株なら、普通株式EPSは100円です。

(1,000億円-優先配当100億円)÷普通株式9億株=100円

 優先株発行前に優先配当がなければ、同じ利益と普通株式数でEPSは約111.1円です。優先株式を発行しても普通株式数が直ちに増えない設計はありますが、普通株EPSの分子には影響します。「株数が増えないから希薄化ゼロ」とは限りません。

転換・普通株対価取得による潜在的な希薄化

 優先株主が普通株へ転換できる、または会社が普通株を対価として取得できる条件があれば、将来の普通株式数が増える可能性があります。転換条件を満たす優先株式は、潜在株式調整後EPSの計算対象になる場合があります。

 発行済み優先株数、転換比率、転換価格の調整条項、転換可能期間を使い、最大普通株式数を試算します。転換価格が株価下落時に引き下がる条件では、発行される普通株数が増えるため注意が必要です。

資本コストは配当率だけではない

 発行会社側の実質コストには、優先配当、発行費、将来の取得差額、格付への影響、普通株主の利益配分、取得時の借り換え条件が含まれます。税務上、社債利息と株主配当では扱いが異なるため、表面配当率と社債利率をそのまま比べません。

 発行会社と普通株主への影響を確認したら、決算書と開示資料へつなぎます。優先株式の分析は、貸借対照表の一行だけでは完結しません。資金調達、配当、普通株EPS、将来取得を三表と注記へつなぎます。

貸借対照表・株主資本等変動計算書

 日本基準で株式として発行した払込額は、資本金・資本剰余金などの株主資本へ反映されます。種類別の発行済株式数、資本金への組入額、自己株式は株主資本等変動計算書や注記で確認します。

 IFRSでは、名称が優先株式でも、発行会社が現金を引き渡す契約上の義務を負うかなど、契約の実質によって資本または金融負債へ分類します。特定日に強制償還する優先株式や、保有者が現金償還を請求できる商品は、金融負債となる可能性があります。会計基準が違う会社の自己資本比率を比べるときは分類を確認します。

損益計算書とEPS

 資本に分類される優先株式の配当は、通常、支払利息のような営業費用ではなく利益処分です。そのため営業利益や当期純利益が同じでも、普通株EPSを作る段階で優先配当を控除します。負債に分類される商品なら、分配が金融費用となる場合があります。

 会社が「調整後EPS」を示すときは、優先配当、普通株対価取得、取得差額をどう扱ったか確認します。基本EPSと潜在株式調整後EPSの差も見ます。

キャッシュフロー計算書

 優先株式発行による収入は資金調達であり、配当支払と会社による取得も財務キャッシュフローへ表れるのが一般的です。発行年度だけ財務CFが大きく増えても、本業のキャッシュ創出が改善したわけではありません。

 調達資金を何へ使い、投資後の営業CFで優先配当と将来取得を賄えるかを追います。大型投資のために発行した場合は、計画投資額、完成時期、利益貢献、取得可能日を同じ年表へ置きます。

必ず読む開示資料

資料確認する内容
定款種類株式の法的な権利、議決権、取得条項
発行決議・適時開示発行額、資金使途、配当条件、取得可能日
有価証券届出書・目論見書全条件、リスク、税務、引受、格付
有価証券報告書残高、配当、EPS、会計分類、資金使途の進捗
決算説明資料経営者の資本政策、取得方針、投資回収
東証の銘柄概要上場日、コード、発行価格、上場制度

購入前に確認する15項目

 優先株式は、銘柄名と利回りだけでは比較できません。次のチェックリストを一銘柄ずつ埋めます。

  1. 発行会社:事業、利益、営業CF、財務、格付はどうか
  2. 法的性質:株式、社債型種類株式、優先出資証券のどれか
  3. 配当率:固定、変動、普通株連動のどれか
  4. 累積性:未払配当が翌期以降へ持ち越されるか
  5. 参加性:所定配当を超えて普通株配当へ参加できるか
  6. 配当停止条件:分配可能額、会社裁量、規制上の制約は何か
  7. 議決権:原則なしでも、どの事由で発生するか
  8. 取得権者:会社と株主のどちらが取得を動かせるか
  9. 最初の取得可能日:満期ではないことを理解しているか
  10. 取得対価:現金、普通株、その他資産のどれか
  11. 取得後の配当率:金利連動、ステップアップ、上限・下限はあるか
  12. 転換条件:普通株への転換比率と最大希薄化はどの程度か
  13. 市場流動性:売買高、板、売買単位、価格差はどうか
  14. 購入価格:取得価格より上か下か、取得時損益はいくらか
  15. 税務:通常配当と会社取得時のみなし配当・譲渡損益を確認したか

三つのシナリオを数値で残す

 最初の取得可能日に取得される標準ケース、取得が見送られ金利が上昇する弱気ケース、信用力が改善して価格が上昇する強気ケースを作ります。各ケースで受取配当、売却・取得価格、保有年数を置きます。

 ただし、強気ケースでも取得価格が上値を抑える可能性があります。弱気ケースでは「売らずに待てば額面へ戻る」と仮定せず、取得されない期間と配当停止も考えます。

ポートフォリオでは発行会社と金利への集中を測る

 複数の社債型種類株式を持っていても、同じ業種・同じ景気要因・同じ国内金利へ依存していれば十分な分散ではありません。普通株、社債、預金を含め、発行会社別、業種別、金利感応度別の金額を集計します。

 優先株式は安定配当を狙う選択肢になり得ますが、生活費を支える配当計画では停止・価格下落を織り込みます。株式投資の始め方で扱う余裕資金・分散・長期の原則を外さず、商品条件を理解できる範囲へ保有額を抑えることが大切です。

まとめ

  • 優先株式は、配当や残余財産などで普通株式より優先する条件を持つ種類株式です
  • 「優先」は債権者より上という意味ではなく、元本・配当も保証されません
  • 累積・非累積、参加・非参加、固定・変動、議決権、取得・転換条件は銘柄ごとに違います
  • 社債型種類株式は社債に似た値動きをしても法的には株式で、最初の取得可能日は満期とは限りません
  • 価格は発行会社の信用力、市場金利、取得期待、流動性によって変動します
  • 普通株式数が直ちに増えなくても、優先配当は普通株EPSの分子を減らし、転換条件は将来希薄化を生みます
  • 購入前は目論見書で配当停止、取得見送り、普通株対価、税務を確認し、複数シナリオで利回りを計算します

よくある質問

Q. 優先株式とは何ですか?

 配当や会社清算時の残余財産について、普通株式より優先する条件を持つ種類株式です。代わりに議決権が制限される、配当の上振れへ参加できない、発行会社に取得権があるなどの条件が付くことがあります。

Q. 優先株式は元本保証ですか?

 元本保証ではありません。市場金利上昇、発行会社の信用悪化、流動性低下で価格が下がり、配当が停止される可能性もあります。発行会社による取得条項があっても、投資家が希望する日に取得されるとは限りません。

Q. 優先株式と社債型種類株式の違いは何ですか?

 社債型種類株式は、優先株式のうち、所定の配当、議決権制限、会社による取得条項など、社債に似た商品性を持つものの通称です。ただし法的には株式で、社債権者より弁済順位が低く、配当は利息と同じ確定債務ではありません。

Q. 優先株式は配当が高いほど有利ですか?

 一概には言えません。高い配当率は、信用、金利、取得見送り、流動性などのリスクを反映している場合があります。市場価格に対する利回りと、取得される場合・されない場合の総収益を比較してください。

Q. 優先株式を発行すると普通株は希薄化しますか?

 普通株式数が直ちに増えない設計でも、優先配当を普通株主に帰属する利益から控除するため、普通株EPSへ影響します。普通株への転換権や普通株を対価とする取得条項があれば、将来の株式数も増える可能性があります。

参考リンク(出典)