日本株

通信株3社を比較|NTT・KDDI・ソフトバンクの違いと株主還元

通信株3社の違いを、NTT・KDDI・ソフトバンクの事業と強みから比較。安定したストック収益の仕組み、非通信分野への多角化、配当などの株主還元、成長性と投資前の注意点を解説します。

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日本株の業界研究第6回/全19回
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通信株3社は同じ携帯通信事業を持ちますが、NTTは固定・モバイル・ITを含む総合力、KDDIは通信と金融・生活サービス、ソフトバンク(9434)はPayPay・LINEヤフー・AI関連への展開に違いがあります。安定した通信収入が共通する一方、設備投資、規制、通信障害、非通信事業の成否が業績を左右します。

 この記事では、2026年6月時点の公式IRをもとに、事業構成、株主還元方針、確認すべき指標を比較します。NTTの2023年の1対25株式分割は最低投資金額を下げましたが、企業価値を増やしたわけではありません。メガバンク総合商社と比べた収益構造の違いも整理します。

【初級編】そもそも「通信会社」はどうやって儲けているのか

 まずは、通信会社のビジネスモデルの基本から確認しましょう。

① 本業は「毎月の通信料」というストック収益

 通信会社のもっとも基本的な収益源は、私たちが毎月支払う携帯電話・スマートフォンの通信料金です。

 ここで重要なのが、この収益が「ストック型(積み上げ型)」だという点です。契約者がいったん契約すれば、毎月ほぼ自動的に料金が入ってくるため、収益が非常に安定しています。

 飲食店のように「今日はお客さんが来るかどうか」で売上が大きくブレるフロー型のビジネスとは対照的で、通信会社は「契約者数 × 毎月の料金」で計算できる、見通しの立てやすい収益構造を持っています。この安定感こそが、配当の安定にもつながる最大の強みです。

② 高い参入障壁に守られた「寡占」ビジネス

 通信事業は、誰でも簡単に始められるビジネスではありません。

 全国に基地局や通信網を張りめぐらせる巨額の設備投資、電波を使うための国の免許、長年かけて築いた信頼とブランド――これらが高い参入障壁となり、結果として日本の携帯通信市場は、NTT(ドコモ)・KDDI(au)・ソフトバンクの大手3社による「寡占(少数の企業による支配)」状態になっています。

 近年は楽天モバイルが「第4の勢力」として参入しましたが、それでも大手3社の地位は依然として強固です。競争が限られているぶん、価格決定力が比較的高く、安定した利益を生みやすい業界構造になっています。

③ ディフェンシブ株の代表格

 携帯電話やインターネットは、今や電気・水道と同じく「生活に欠かせないインフラ」です。

 景気が悪くなったからといって、多くの人がスマホを解約するわけではありません。このため、通信会社の業績は景気変動の影響を受けにくく、不況に強い「ディフェンシブ株(守りの銘柄)」の代表格とされています。

 商社が「景気や資源価格と連動する攻めの高配当株」だとすれば、通信会社は「景気に左右されにくい守りの高配当株」。性格の異なる両者を組み合わせることで、ポートフォリオ全体の安定感が増す、という考え方ができます。

④ いまや「通信+金融+α」の総合企業

 現代の通信3社は、もはや単なる「電話会社」ではありません。

 国内の人口減少によって、通信契約数の自然な増加はいずれ頭打ちになります。そこで各社は、通信で築いた巨大な顧客基盤(数千万人規模の会員)を土台に、金融・決済、ポイント経済圏、電力、コンテンツ、法人向けDX(デジタル化支援)、データセンターなど、「非通信」の事業へと大きく軸足を広げてきました。

 スマホ決済(PayPay・au PAY・d払い)やポイント、ネット銀行、電気料金プランなど、私たちの生活のあちこちに通信会社のサービスが入り込んでいるのは、この多角化の表れです。

【中級編①】通信3社の個性 ―― 似ているようで全く違う3社

 ここからは、NTT・KDDI・ソフトバンクの3社それぞれの個性と強みを整理していきます。

① NTT(日本電信電話)―― 業界の盟主、研究開発の巨人

 NTTは、固定通信、モバイル、法人・ITサービスを持つ大規模な通信グループです。

 その正体は、巨大なグループの持株会社(ホールディングス)です。傘下に、移動通信のNTTドコモ、固定通信・地域通信のNTT東日本・西日本、ITサービス・システム開発のNTTデータ、法人・海外向けのNTTコミュニケーションズなどを抱え、通信からITまでを総合的に手がけています。

 特徴の一つは事業規模と研究開発です。NTTは「IOWN(アイオン)構想」と呼ばれる次世代の光通信基盤を検証から実装へ進めています。ただし、商用化の時期、投資負担、収益への寄与は継続確認が必要です。

 2023年には1株を25株に分割し、1単元あたりの投資金額を引き下げました。NTTは2026年5月時点で、2027年3月期に16期連続増配となる予想を示していますが、予想は将来の確定値ではありません。

② KDDI(au)―― 連続増配の優等生、ライフデザインの雄

 KDDIは、「au」ブランドでおなじみの、通信3社の中でも株主還元への積極姿勢で際立つ存在です。

 KDDIの大きな特徴は、「通信」と「ライフデザイン」を二本柱に据えた戦略です。通信で築いた顧客基盤を活かし、金融(auじぶん銀行、auカブコム証券、au PAY)、電気(auでんき)、コンテンツ、エンタメなど、生活に密着したサービスを幅広く展開しています。

 KDDIは2002年度から増配を続け、2026年3月期まで24期連続増配となりました。2026年6月時点の方針は、連結配当性向40%超を維持しながら持続的な増配を目指すというものです。今後の増配は業績や会社方針により変わります。

 近年は、総合商社の三菱商事と共同でローソンへ出資し、コンビニという「リアルな顧客接点」を取り込む動きも見せており、通信の枠を超えた事業展開を加速させています。

③ ソフトバンク(9434)―― PayPay経済圏とAIの挑戦者

 3社の中で、もっとも誤解されやすいのがソフトバンクです。

 まず押さえておきたいのが、「ソフトバンク(証券コード9434)」と「ソフトバンクグループ(証券コード9984)」はまったくの別物だという点です。

  • ソフトバンク(9434):携帯通信を中心とした「通信会社」。今回の通信3社にあたるのはこちら
  • ソフトバンクグループ(9984):孫正義氏が率いる「投資会社」。世界中のハイテク企業へ投資する持株会社で、業績の振れ幅が非常に大きい

 ここを混同すると、まったく性格の違う株を取り違えてしまうので注意が必要です。本記事で扱うのは、安定した通信会社である「ソフトバンク(9434)」のほうです。

 通信会社としてのソフトバンクの特徴は、スマホ決済「PayPay」、LINEヤフー、法人DX、AIデータセンターなどへの展開です。配当性向は過去に高い水準だった時期がありますが、2026年度からの中期経営計画では、固定的な85%目安ではなく、利益成長に合わせた1株当たり配当の継続的な増配を目指す方針へ更新されています。

④ 3社をざっくり並べてみる

 2026年6月時点の違いを整理します。

会社事業の特徴株主還元の確認点主なリスク
NTT固定・モバイル・IT、IOWN継続増配と自社株買い大規模投資、規制、事業の複雑さ
KDDIau、金融・電気・ローソン24期連続増配、配当性向40%超方針通信競争、非通信投資、障害
ソフトバンク(9434)PayPay、LINEヤフー、AI利益成長に合わせた継続増配方針高い投資負担、グループ会社、競争

 「同じ通信株」でも、総合力と研究開発のNTT、連続増配と生活密着のKDDI、決済・AIに攻めるソフトバンク、と性格がはっきり分かれているのが面白いところです。

通信3社の事業規模(連結売上高・2026年3月期)
NTT
約14.4兆円
ソフトバンク
約7.0兆円
KDDI
約6.1兆円

※2026年3月期の連結売上高(NTTは営業収益)。会社ごとに事業範囲が異なり、NTTはIT・グローバル(NTTデータ等)、ソフトバンク(9434)はLINEヤフー・PayPay等を含みます。出典:各社「2026年3月期 決算」。

【中級編②】通信株が高配当投資家に愛される3つの理由

 ここからは、通信株が「日本の高配当株投資」の文脈で、なぜ商社・銀行・損保と並ぶ中核ポジションを占めるのかを解説します。

① 安定したストック収益が支える「配当の安定」

 すでに触れたとおり、通信会社の収益は毎月の通信料というストック型で、景気に左右されにくいのが特徴です。

 継続的な通信収入は配当の原資を支えやすい一方、配当は保証されません。設備投資、規制対応、買収、財務方針によって減配や方針変更が起こる可能性があります。

② 株主還元への積極姿勢

 通信3社は、いずれも株主還元に積極的な姿勢を見せてきました。

 KDDIの連続増配や、NTTを含む各社の自社株買いなど、還元方法には違いがあります。利回りは株価で日々変わるため、配当額だけでなく利益、配当性向、フリーキャッシュフローと合わせて確認する必要があります。

 メガバンクや商社の記事で触れた「配当+自社株買い」という株主還元の考え方は、通信3社にも共通して当てはまります。

③ 「攻めの非通信」という成長の伸びしろ

 通信株は「安定しているが成長は乏しい」と見られがちですが、近年は金融・決済、AI、データセンターといった非通信分野が新たな成長エンジンとして育ちつつあります。

 安定した通信収益という「守り」と、非通信の成長という「攻め」。この両面を併せ持つことが、通信株を単なる「ディフェンシブ株」以上の存在にしている、という見方もできます。

【上級編①】通信株の業績・財務で見るべきポイント

 ここからは、上級者向けに「通信株を分析するときに見るべき指標」を整理していきます。

① 契約者数とARPU(1契約あたりの売上)

 通信会社の本業の力を測る基本が、「契約者数」と「ARPU(アープ)」です。

 ARPUとは「Average Revenue Per User」の略で、契約者1人あたりが毎月いくら払ってくれているか、を示す指標です。「契約者数 × ARPU」が通信収益のおおもとになるため、契約者が増えているか、ARPUが下がっていないか、は決算ごとの重要なチェックポイントになります。

 近年は、後述する料金値下げの影響でARPUが下がる局面もありましたが、データ使用量の増加や付加サービスの拡大で、これを下支えしようとする動きが各社で進んでいます。

② 非通信事業の伸び

 国内の通信市場が成熟している以上、各社の将来の成長を左右するのは「非通信事業がどれだけ伸びるか」です。

 金融・決済(PayPayなどの取扱高)、ポイント経済圏の会員数、電力、法人DX、データセンターといった分野の成長スピードは、各社の決算説明資料で必ず確認したいポイントです。

③ 設備投資(CAPEX)の負担

 通信会社は、5G、そして将来の6Gに向けて、通信網に巨額の設備投資を続ける必要があります。

 この設備投資の負担が重すぎると、利益や配当の余力を圧迫しかねません。「安定して稼ぐ一方で、絶えず大きな投資を求められる」という宿命を抱えている点は、通信株の構造として理解しておく必要があります。

④ 株主還元方針(配当性向・自社株買い)

 各社が中期経営計画で掲げる「配当性向の目安」「連続増配の方針」「自社株買いの方針」は、長期投資家にとって最重要の確認事項です。

 ただし、通信3社は商社やメガバンクのように「累進配当(減配しない方針)」という言葉を前面に出しているとは限りません。各社がどのような言葉で還元を約束しているか、最新のIR資料で正確に確認することをおすすめします。

【上級編②】非通信への多角化 ―― 通信会社の「第二の顔」

 通信3社を理解するうえで欠かせないのが、「経済圏(エコシステム)」という考え方です。

① 「経済圏」競争とは何か

 各社は、自社の通信契約者を中心に、決済・ポイント・金融・買い物・電気などのサービスを一つの輪(経済圏)でつなぎ、「生活のすべてを自社のサービスで完結してもらう」ことを目指しています。

  • NTT(ドコモ)経済圏:dポイント・d払い・dカードなど
  • au(KDDI)経済圏:Pontaポイント・au PAY・auじぶん銀行など
  • ソフトバンク経済圏:PayPayポイント・PayPay・LINEヤフーなど

 顧客が経済圏の中にとどまるほど、通信を解約しにくくなり(囲い込み)、同時に決済や金融からの収益も増えていく、という二重の効果が狙えます。

② 金融・決済の収益化

 特に注目されているのが、スマホ決済を入り口とした金融事業です。

 決済データを活用したローンや保険、証券、銀行といった金融サービスは、利益率が高く、成長余地も大きい分野とされています。膨大な会員基盤を持つ通信会社が金融に本格参入することで、銀行や証券といった既存の金融業界に大きな影響を与える可能性があります。

③ AI・データセンターという新たな主役

 近年は、AIの普及に伴うデータセンター需要も、通信各社の新たな成長テーマとして浮上しています。

 通信会社は、もともと全国に通信網やデータセンターを持つインフラ事業者です。この強みを活かして、AI向けの計算基盤やデータセンター事業を拡大しようとする動きが、各社で活発になっています。AIを支える物理インフラという意味では、スーパーゼネコン(建物を建てる)とも地続きのテーマだと言えるでしょう。

【超上級編】マクロ環境 ―― なぜ「今」、通信株なのか

 最後に、通信株を取り巻くマクロ環境を整理し、結論につなげていきます。

① 「金利のある世界」と高配当株の見直し

 長く続いた超低金利の時代が終わり、日本にも「金利のある世界」が戻りつつあります。

 一見すると、金利上昇は借入の多い通信会社にとって利払い負担の増加という逆風にも見えます。一方で、インフレ・金利上昇の局面では、安定したキャッシュフローを生む高配当株全体が「実物に近い安定資産」として見直されやすい、という側面もあります。インフレと資産形成の関係は、インフレと長期投資の記事でも詳しく触れています。

② 東証の資本効率改革

 2023年以降、東京証券取引所は上場企業に対して「資本効率(ROEやPBR)を意識した経営」を強く求めています。

 通信3社も、この流れの中で、自社株買いの拡大や株主還元の強化に取り組む姿勢を見せています。安定した利益を背景に、株主還元を一段と充実させる余地があるセクターとして注目されています。

③ 新NISAとの相性の良さ

 通信株も新NISAの成長投資枠で保有できますが、非課税であることと投資先として適切であることは別です。NTTの株式分割で最低投資金額は下がりましたが、個別企業のリスクは残ります。制度の仕組みは新NISAの記事、個別株の基本は株式投資の始め方で確認してください。

【番外編】通信株投資で押さえておきたい3つの注意点

 ここまで魅力を中心に解説してきましたが、通信株にも当然リスクは存在します。最後に、長期投資家として押さえておきたい注意点を3つ紹介します。

① 料金値下げ・規制リスク

 通信株の最大のリスクが、政府による「通信料金の引き下げ圧力」です。

 携帯料金は国民生活に直結するため、過去にも政府主導で大幅な料金値下げが進められ、各社の通信収益が圧迫された局面がありました。通信は「公共性の高いインフラ」であるがゆえに、政治・規制の動向に業績が左右されやすいという宿命を抱えています。

② 大規模通信障害のリスク

 通信は社会インフラそのものであるため、ひとたび大規模な通信障害が起きると、利用者への補償や信頼の低下といった大きな影響が生じます。

 過去にも、大手キャリアで長時間の通信障害が発生し、社会的に大きな問題となった事例があります。こうした障害リスクは、通信会社が構造的に抱える宿命的なリスクとして理解しておく必要があります。

③ 成長の頭打ちと、競争環境の変化

 国内の通信市場は成熟しており、契約数の自然増は見込みにくい状況です。今後の成長を非通信(金融・AI・データセンター)に頼る構図のため、「その多角化がうまく育つかどうか」が各社の長期的な評価を左右します。

 また、楽天モバイルのような新規参入者との競争、経済圏をめぐる激しい顧客の奪い合いなど、競争環境の変化にも目を配り続ける必要があります。「安定しているから持ちっぱなしで安心」と思考停止せず、各社の戦略の進み具合を定期的に確認する姿勢が大切です。

まとめ

 いかがでしたか?

 通信3社(NTT・KDDI・ソフトバンク)は、毎月の通信料という安定したストック収益を土台に、景気に左右されにくい「守りの高配当株」として、日本株投資の中核を担ってきました。

  • 通信会社の本業は、毎月の通信料というストック型の安定収益
  • 高い参入障壁に守られた寡占ビジネスで、ディフェンシブ株の代表格
  • NTTは固定・モバイル・ITを持ち、IOWNを進める。2023年に1対25の株式分割を実施
  • KDDIは2026年3月期まで24期連続増配で、金融・電気・ローソンなどへ多角化
  • ソフトバンク(9434)はPayPay・LINEヤフー・AIへ展開し、利益成長に合わせた継続増配を目指す。投資会社の9984とは別物
  • 安定収益を背景に株主還元に積極的で、非通信(金融・AI・データセンター)に成長の伸びしろ
  • 注意点は、料金値下げ・規制リスク/大規模通信障害/成長の頭打ちと競争激化の3つ

 商社(攻めの資源・実物)、メガバンク(金利・利ザヤ)、メガ損保(リスク引受+運用)に、通信(安定したストック収益)を加えることで、ポートフォリオはより性質の異なる収益源で分散され、安定感が増していきます。

 日々の株価の上下に一喜一憂せず、「長期的な資産形成」を続けるための土台として、今回の知識が少しでもお役に立てば嬉しいです。また、投資に唯一の正解はなく、いろいろな見方があると思います。私自身もまだ学びの途中ですが、この記事がご自身の考えを深める一助になれば幸いです。

※本記事は筆者の考えを共有することを目的としており、特定銘柄の売買を推奨する意図は一切ありません。投資判断は必ずご自身の責任において行ってください。


参考リンク(出典)

本記事の作成にあたっては、以下の公式情報を参考にしました。最新の数値や制度は変わりますので、投資判断の際は各社・各サイトの一次情報もあわせてご確認ください。